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ABM戦略とは?メリットやおすすめのツールも紹介!

2022.07.14

2023.06.08

BtoBマーケティング

ABMとは、近年欧米で急拡大しているBtoBマーケティングの戦略です。具体的な企業や団体(アカウント)をターゲットにして、売上を最大化することを目的としています。

考え方そのものは20年ほど前から存在していましたが、顧客関係管理、営業支援システムなどのMA(マーケティングオートメーション)をテクノロジーで補えるようになったことで、アメリカを中心に大きな注目を浴びるようになりました。

ABMの基本的な考え方や実践方法、おすすめツールなどをご紹介いたします。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABMは、2003年、アメリカにあるITSMAが提唱したマーケティング手法で、「企業が持つ重要なクライアントに対し、持続的な成長性と戦略を提供するもの」とされています。

ABMの最も基本的な考え方は、マーケティングの基準を「ターゲットアカウント」へ転換する点にあります。これまで見込み顧客の創出するデマンドジェネレーションは、主にアカウント(企業)ではなく、リード(個人)にフォーカスしてきましたが、これを逆転させたのがABMです。

また、ABMを展開する企業では常に「戦略的」という用語が用いられます。

従来の日本企業では営業部とマーケティング部との意識の違いによって溝が生じるケースが多くありました。しかし、ABMでは営業部やマーケティング部をはじめとして、ターゲットアカウントに対する「点」ではなく「面」での積極的なアプローチが重視されます。

ABMは、顧客との深くて強固な関係を築くための方法論といえるでしょう。

個人と企業を対象としたマーケティングが可能

従来のマーケティングは、リードを起点に、ふるいにかけられた見込み顧客にクロージングしていくファネル型です。

一方、ABMでは特定のターゲット企業と良好な関係を維持して積極的にアプローチする方法が有効とされています。そのためABMは、個人と企業を対象としたマーケティング手法なのです。

ABMとBtoBマーケティングとの関係性

これまで日本のBtoBマーケティングは、「顧客第一主義」の営業部門が足で稼ぐスタイルが主流でした。しかし、従来の手法では、潜在的な顧客の掘り起こしはできず、新規市場の効率的な開拓につながりません。

そこで、日本では2010年代に各企業が競ってBtoBマーケティング理論を学び、マーケティング部門を設けました。しかし、営業部門がマーケティング部門の提示する案件をフォローしないなど、部門間の連携に課題を残しています。ABMはこうした課題に対して最も効果が高いとされています。

ABMが成果を上げることができる理由とは

ABMでは、これまで各部門で管理してきた顧客情報を一元的に管理します。そのため、マーケティング部門が抽出した見込み顧客に対して、営業部門は有効なアプローチを実施できるのです。

営業とマーケティングが連携できる

ABMは、マーケティングの基本設計を営業部門の視点で再設計し、最初からターゲットにしたい企業だけをスコアリングします。

従来のように、マーケティング部門が創出した見込み案件(MQL)を営業部門に渡すだけではなく、双方が結果を得られやすいターゲットを抽出します。そのため、部門間の連携力を高めることができます。逆にいえば、ABMの成否を握るのは営業とマーケティングの連携強化ともいえるでしょう。

マーケティング活動が売上に貢献できる

マーケティング活動が売上に直接つながらないといわれることがあります。予算と時間をかけて展示会を開いたり、データベースやメルマガを分析したりして創出したMQLが、獲得に至らなければ当然のことかもしれません。

このボトルネックを解消するため、ABMでは営業部門がフォローしたい企業を最優先にリストアップし、最初にターゲットアカウントを定義します。

そのため、営業担当者がフォローしないという問題はそもそも発生しづらいのです。

既存のクライアントからすぐに成果が出せる

ターゲットアカウントを決定する際、「既存顧客」と「新規顧客」に分けて考えます。社内には既存顧客の情報が圧倒的に多いため、ABMでは既存顧客との新規案件の創出を重視します。

すでに、商品やサービスに関するさまざまな情報を持つ既存顧客に対して新しい製品や複数の製品を活用したソリューションを提案し、ビジネスチャンスを広げます。そのため、商品データを一から収集しなくてはならない新規顧客よりも早く成果が出やすいのです。

新規顧客の獲得ができる

新規開拓は営業において非常にハードルの高い作業で、飛び込み営業などで無駄な訪問を繰り返すのは非効率です。

一方、ABMで新規顧客をターゲットアカウントにする場合、具体的な企業の特定の部門にいるキーパーソンを対象にします。

商材の機能や競合関係なども加味してターゲットを明確にするため、的を絞った営業をしやすく、受注決定率も高まります。

コストをあまりかけなくてすむ

BtoBマーケティングで最もコストがかかるのが、見込み客データを収集する「リードジェネレーション」というプロセスです。まったく新しい顧客情報は、展示会や共催セミナーなどで得るなどの方法があります。

一方で、まだ取引がないだけで、過去にセミナーに参加申し込みをしていたり、営業部門がすでにアプローチをしていたりすることがあります。その際に交換した名刺などをデジタル化して、部門を超えて共有できればマーケティングの対象にできます。

いままでの投資が無駄にならない

ABMでは、過去に行ってきた見込み顧客の創出に関わる活動全般を総合的に活用します。

セミナー担当者のPC内に保存してある参加者リストや、営業担当者だけが持っているエンジニアや経営幹部の名刺などを掘り起こすので、これまでの投資が無駄になりません。

つまり、過去に積み重ねてきたマーケティングやセールスのツール、その運用ノウハウを活用して大きな成果を上げることができるのです。

企業全体でターゲットに関わることができる

日本企業における営業活動のノウハウは、個人の知識として蓄積されています。実は、ABMが目指しているのは、優秀な営業担当者が行ってきたノウハウそのものです。

しかし、今後の日本は熟練人材の引退や少子高齢化などで、人材不足が深刻になると言われています。この課題を解決する方法は、顧客数を増やすだけではなく、貴重なリソースを集中的に活用することです。

個人に依存した営業活動ではなく、企業全体でノウハウを活用するABMが効果的といえるでしょう。

ABM戦略の流れ

ABM戦略の軸はデータマネジメントです。特にアカウントターゲットを選定するうえで企業データを整理することが第一歩です。

日本企業がABMを実践するためには以下のプロセスがカギを握ります。

1.ファイルの統合を行う

企業の中には、膨大な顧客情報が名刺やアンケート、購買履歴などさまざまなフォーマットで保存されています。

ABMは、こうしたデータをワンファイルに統合することからスタートします。

2.個人や企業データの名寄せ

名寄せとは、複数のデータベースのなかから、情報をもとに企業や個人のデータを1つにまとめることを指します。

企業に保存しているデータには、同じ企業や個人の情報が分散・重複していることがあります。日本企業では、過去の登記制度などによって同一の企業名が存在するため、データを統合する作業が困難になることがあります。

3.企業と個人のデータの紐づけ

ABMは企業でスコアリングしますが、動画を閲覧したり、資料をダウンロードするのは企業に所属する個人です。

そのため、個人の行動と企業データを紐づけする作業が必要です。紐づけは、企業データと個人データの名寄せが完了していることが前提条件です。

4.不要なデータの処理

次のステップは、営業対象外となる企業データの除外です。営業対象外になるのは、事業部のターゲットアカウントになり得ない企業や個人を指します。

具体的には競合やその代理店、自社の関連会社、仕入先などが挙げられます。処理の方法には、データベースから完全に削除してしまう「物理削除」と、削除フラグで処理する「論理削除」があります。

物理削除をしてしまうと、ターゲット対象外の個人が展示会などで名刺を置いていったときに再び新規登録されてしまうので、論理削除のほうが推奨されています。

5.企業の属性情報付与

マーケティングをするうえで、その企業の業種や規模、グループ企業の情報は重要です。しかし、名刺にはそこまでの情報が記載されていないことが多いので、統合されたデータに属性情報を付与する必要があります。

その際、注意したいのが「企業分類」です。日本の企業分類はいくつかの情報会社がそれぞれで定義しており、統合されていません。そのため、企業分類を決めるときは、その情報会社の分類を使用するかあらかじめ決めておくことが大切です。

ちなみに弊社では、HubSpotのリード情報にさまざまなデータを付与できる「FindFolio」をリリースしました。従業員情報や法人番号などの詳細な属性データを提供でき、簡単に導入いただけるのが特徴です。

資料ダウンロードはこちらからどうぞ。

6.ターゲットの設定

ここまで情報をまとめたところで、初めてターゲットアカウントを定義します。

自社の製品やサービスによって、ターゲットとなる企業や部署は異なります。まずはそれらを最大公約数で括ってグルーピングします。そのためには、市場からの客観的な視点で自社の製品やサービスを見直すことがポイントです。

たとえ技術や生産ラインが異なったとしても、同じ企業の部署をターゲットにする商材であれば、連携してマーケティングしたほうが競合優位性を生み出せます。

ABM戦略に役立つおすすめツール

ABM戦略の基本は、データとコンテンツのマネジメントです。企業や個人の情報をまとめたデータベースの中から、潜在的なニーズを抱えるターゲットパーソンを見つけるプロセスがポイントです。

そこで重要になるのは、STPという販促のための枠組みです。Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つの単語の頭文字からできています。

顧客を年齢や性別などのセグメントに分類し、その中からターゲットを定め、自社から出すメッセージを決めて競合との差別化を図ります。

こうした膨大なデータのマネジメントを効率化するおすすめツールは以下の通りです。

1.データベース

自社にとって最適なアカウントを抽出して、有効なアプローチをするうえで基本となるのが企業データベースです。STPにおけるセグメンテーションを行うためには、データベースに登録されている情報が正確でなくてはなりません。

取引があるターゲットアカウントなら企業概要などの既存顧客のデータがあり、何をいつ購入したかというクロスセルが重要な情報です。

社内名刺などのフォーマットをワンファイルにまとめたり、販売代理店や特約店などのパートナーが保有するリストもデータベースにまとめたりすると、より充実したデータベースになります。

いわばABM戦略を練るうえでの土台となるツールといえるでしょう。

2.CRM

CRMは、「顧客関係管理」や「顧客関係性マネジメント」を指します。これは、顧客との関わりから顧客の嗜好や予算、生活スタイルなどのデータを分析して、継続的なアプローチをする手法です。

企業の売上は既存顧客のうち2割の優良顧客によって維持されているともいわれています。そのため、既存顧客の満足度を高めるためのCRMツールはマーケティングで重要なポジションを占めています。

主に、これまで部門やチームによって管理されていた顧客情報をデータベースなどを活用して網羅的に管理するツールが挙げられます。担当者名や所属部署、商談の履歴や進捗状況などをまとめられるため、ABM戦略を進めるうえで役立ちます。

3.SFA

SFAとは、いわゆる「営業支援システム」です。近年は営業活動に不可欠なツールとして、導入する企業が増えています。CRMの中の一つとして活用されています。

SFAツールは、顧客情報の一元管理をするほか、プロジェクトや案件ごとの進捗状況を見える化することで、組織として営業のノウハウを蓄積できます。

また、見積書作成を迅速に行ったり、営業担当者の行動プロセスを管理したりするツールなどがあります。ABMでターゲットにした対象へのアプローチを支援するために役立ちます。

4.MA

MAとは、主にマーケティングのプロセスを自動化するためのソフトウェアやサービスを指します。

MAツールは、データベースやCRMなどに蓄積されたデータに、メールの開封やwebサイトの閲覧といった行動データを合わせて、実際に効果測定までを行うツールです。

見込み顧客を行動と属性情報でスコアリングするためには不可欠で、ABMを実践に欠かせないシステムといえるでしょう。

ABM戦略で効率的なマーケティングを行いましょう

欧米では、基本的なマーケティング手法として、ABM戦略が定着しつつあります。日本企業が今後生き残っていくため、ABM戦略が不可欠になる可能性は大いにあります。

一方で、ABMのシステムを一から構築するには時間がかかります。そこで400万件の企業ニュース情報からリードに属性情報などをプラスできる「Findfolio」をご活用ください。

ちなみに弊社では、HubSpotのリード情報にさまざまなデータを付与できる「FindFolio」をリリースしました。従業員情報や法人番号などの詳細な属性データを提供でき、簡単に導入いただけるのが特徴です。

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松永創 FLUED CEO / 代表取締役 BtoBマーケティングスペシャリスト

国内システムメーカーの営業としてキャリアをスタート。その後 テレマーケティング企業で事業/拠点の立ち上げ・営業企画に従事。自身もインサイドセールス部門での業務経験を積む。

その後B2Bマーケティングエージェンシーでベンチャー企業から大手IT企業、製造業など様々なマーケティングに携わる。BtoBマーケティング/営業DX/インサイドセールスで携わった企業/プロジェクトの数は500以上に及び、スピード感あふれるコンサルティングには定評がある。

B2Bマーケティング/営業DXなどのテーマを中心になど講演多數。