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BtoB EC市場規模は350兆円を突破 〜課題と今後の動向〜

2021.02.27

2023.06.08

BtoBマーケティング

2019年のBtoB EC市場規模は352兆円、前年比で2.5%増

まず現状のBtoB ECの市場規模を確認しましょう。右肩上がりに拡大しているEC化の実態を、経済産業省「電子商取引に関する市場調査」のデータを参考に見ていきます。

2019年のBtoBのEC市場規模は、352兆9,620億円で、前年比2.5%増となっています。

出典:経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」

BtoB EC化率は31.7%、BtoC EC市場よりも約20倍のスピードで拡大

また、BtoBのEC化率は前年から1.5ポイント増の31.7%です。

同年のBtoC EC市場規模は19兆3,609億円(前年比7.65%増)で、EC化率は6.76%(対前年比0.54ポイント増)でした。

BtoB ECの市場規模は、BtoCの約20倍だと分かります。EC化率も右肩上がりを続けているため、成長傾向にあると言えます。

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BtoB EC市場規模の算入範囲・ECにおける定義

ここで、EC市場規模を算出する際の、算入範囲と定義を確認しましょう。

経済産業省の調査では、ECによる財またはサービスの販売額をEC取引金額としています。また、ECの定義として、コンピュータネットワークシステム上で受発注が行われることを要件としているため、見積などの受発注前段階の情報のみがやり取りされた場合の取引金額は含められていません。

出典:経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」

BtoBのEC市場規模は、企業間または企業と政府間で、ECを利用して受発注を行った財・サービスの取引金額をもとに算出されています。この場合、対価を支払うのは、企業または政府で、対価の受取側は企業です。

上記の図のとおり、BtoB EC市場の対象となる取引は以下です。

  • 最終製品メーカーから海外メーカーへの輸出販売(②)
  • 部品メーカーから最終製品メーカーへの販売(③)
  • 最終製品メーカーから卸売企業への販売(④)
  • 最終製品メーカーから小売企業への販売(⑤)
  • 卸売企業から小売企業への販売(⑦)

「海外メーカーから最終製品メーカーへの輸入販売」は対象外となっているところがポイントです。

また、ECにおける定義を確認しましょう。以下のように、広義であれ狭義であれ、コンピューターネットワークシステムを介して商取引(受発注)が行われているものを対象としています。その中でも、狭義においては、「インターネット技術を用いた」がポイントとなっています。

出典:経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」

業種ごとにBtoB EC化率を比較し、見えてくる課題とは?

ここで、業種別のBtoB EC市場規模の内訳を見ていきましょう。業種別にEC市場規模やEC化率を見ることで、課題が分かってきます。

出典:経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」

上記の図表のとおり、製造業」は比較的EC化率が高いことが見て取れます。製造業におけるEC化は、モノをお客様に売るというビジネスモデル上、EC化を行いやすいものと推察されます。製造業の中でもEC化率が高いのは、67.0%で「輸送用機械」、59.3%で「食品」、57.9%で「電気・情報関連機器」となっています。

また、製造業の中でも「繊維・日用品・化学」「鉄・非鉄金属」はEC化率が伸びていますが、市場規模は縮小しています。これらは消費税増税や、米中貿易摩擦の影響によって、出荷が減少していることが要因と予想されます。

一方、EC化率が低くEC化が遅れているのは「建設・不動産業」「情報通信」「サービス」です。提供サービスをシステム化しづらかったり、モノがなくEC化しにくい業種で遅れている印象があります。ただ、EC市場規模は前年比で拡大しているので、今後拡大していくところだと読み取れます。

「卸売」に関しては、EC市場規模が最も大きいものの、規模自体は前年比で縮小しています。これは卸売を通さないビジネスモデルであるDtoCを行うメーカーが増え始めていることを示していると考えられています。

今後のBtoB EC市場は、コロナ禍でオンライン化の需要がさらに加速

では今後、BtoBのEC市場はどのように変化していくのでしょうか。

コロナ禍において人々の移動に制限がある中で、あらゆる産業でオンライン化の需要が急激に高まりました。その影響で、BtoC、BtoBを問わず、オンライン化を検討していなかった事業者においても、EC化やオンライン決済を検討・導入する動きが加速しています。

また、HubSpot Japanが2020年12月に行った「日本の営業に関する意識・実態調査」によると、買い手側が考える「好ましい営業スタイル」が、リモート型のほうが好まれており、訪問型を逆転していることが明らかになっています。この1年間で買い手側の意識が変化し、リモート営業に好感を持つ人も増えているのです。

出典:HubSpot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査」

買い手を対象に「営業担当者から自社への訪問の代わりにリモートでの打ち合わせを提案されたときに感じるであろうマイナスの印象」を尋ねたところ、買い手の約4割が「とくにマイナスの印象は抱かない」と回答しています。また、「マイナスの印象を抱く」買い手は、ツールに対する不安感・手間に関する事柄が上位の理由として挙がっており、営業担当者のリモート営業に関してはネガティブに働かないと考えられています。

また、売り手側に関しても、コロナ禍前後で気持ちの変化は起きています。上記の図では、売り手が考える好ましい営業スタイルは「訪問営業」がリモート営業を上回った状態ですが、2019年末よりもリモート営業の比率も増えています。そして、「以前は訪問型営業が当たり前だったが、当たり前ではなくなった」と感じている人が、全体の74.2%を占めています。

出典:HubSpot Japan「日本の営業に関する意識・実態調査」

こうした調査からも、今後も引き続きオンライン化の需要はさらに高まり、EC化が求められていくものと考えられます。

BtoB取引のEC化のよくある3つの課題

ここまで、BtoB EC市場規模について見てきました。市場環境としてもBtoB取引のEC化が求められていますが、ここでよくある3つの課題をご紹介します。

独自の業務フローや商習慣にあわせた、ECサイトの構築・リニューアルが難しい

BtoB取引の場合、特定の企業との取引が多く、独自の業務フローや商習慣が存在しており、通常のECサイトと仕様が異なります。クローズドで利用するECサイトであれば、特にECサイトの構築は複雑になりがちです。

その他、ECサイトを利用する得意先、代理店ごとに業務フローが異なるケースもあるため、要件定義で業務フローまでを把握し、ECサイトに落とし込む必要があります。

そのため、ECサイトの構築には、労力的にも金額的にも大きな負担となります。数千万円から数億円になることも珍しくないのです。

属人化した業務フローを反映させてEC化できない

上記のような課題とあわせて、よく挙げられるのが、属人化した業務フローをECサイトに落とし込めないという課題です。BtoBのECサイトは、取引先によって業務フローが異なったり、割引率が異なったりすることで、より複雑になります。

これまでエクセルなどの管理ファイルにまとめていた割引率や顧客管理を確認しながら、ECサイト導入を進めることがポイントです。

ECサイトの使い勝手が悪く、利用率が下がる

いざ完成したECサイトであっても、使い勝手が悪く利用率が下がってしまい、結果的に利用されずに終わる恐れがあります。

上記のような売り手側の都合のみを考えてECサイト化をすると、得意先をはじめとした顧客が使いづらいサイトになり、アナログな受発注に戻ってしまう可能性があるのです。

BtoB取引のEC化に向けて必要な仕組みとは?

では、どのような観点に気をつけて、BtoB取引をEC化すればよいのでしょうか。必要な仕組みをご紹介します。

取引先(顧客)毎に価格や掛け率の変更ができる仕組み

BtoB取引において、取引先ごとに価格や掛け率を設定・変更できる仕組みが必要です。取引先によって、取引量や価格を変えることがあるため、必須の仕組みとなっています。また、最低ロット数や最低注文金額を設定するケースもあります。

取引先(顧客)毎に販売する商品の変更ができる仕組み

価格や掛け率の変更だけでなく、販売する商品の変更ができる仕組みも必要です。全ての顧客に対して同じ商品を販売するわけではなく、特定の取引先にのみ販売している商品もある場合、取引先ごとに表示する商品を分ける必要があります。

決済方法の管理・売掛取引にも対応できる仕組み

決済方法の管理、売掛取引にも対応できる仕組みも必要です。取引実績の少ない新規顧客には銀行振込による前払い・代引き・未回収リスクのない外部決済サービスなどで決済を行い、取引実績のある既存顧客には売掛で受注する、といったことがあるからです。

BtoB EC化の課題・お悩みはプロに相談してみましょう

今回はBtoB ECの市場規模や今後の動向について解説したのち、BtoB EC化における課題や必要な仕組みをご紹介しました。

BtoB企業の成長の鍵はEC化が握っていると言われる現在、EC化を進められていない企業もあると思います。独自に行ってしまうと、業務フローにあったECサイトにならなかったり、使い勝手が悪いECサイトが出来上がってしまったりと課題が発生してしまいます。

EC化を進めたいと考えているのであれば、BtoB ECサイトのプロに相談してみてください。

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松永創 FLUED CEO / 代表取締役 BtoBマーケティングスペシャリスト

国内システムメーカーの営業としてキャリアをスタート。その後 テレマーケティング企業で事業/拠点の立ち上げ・営業企画に従事。自身もインサイドセールス部門での業務経験を積む。

その後B2Bマーケティングエージェンシーでベンチャー企業から大手IT企業、製造業など様々なマーケティングに携わる。BtoBマーケティング/営業DX/インサイドセールスで携わった企業/プロジェクトの数は500以上に及び、スピード感あふれるコンサルティングには定評がある。

B2Bマーケティング/営業DXなどのテーマを中心になど講演多數。